ポーランドにまつわるお金・結婚・仕事などの情報を、理系の知識をフル稼働させて徹底リサーチします!

日本とポーランドの中絶事情

 
この記事を書いている人 - WRITER -

※今日は日本とポーランドの中絶に関する重めな話です。当事者の方に十分な配慮ができているか自信がありません。また、法律のことも記載していますが、これに関しては専門外なので、もしかしたら間違っている可能性があります。(一応ちゃんと調べたつもりですが。)

予め了承した上で読み進めてください。



学園ドラマの観過ぎですかね。中絶って、学生カップルに子どもができてしまって、育てられないからするものだと思っていました。なんとなく、25歳位を超えてからは、中絶する人は減っていくのだろうと思っていました。この記事を読んでいる方で、同じように思っていた方は、下の表を見ると驚くかもしれません。


平成30年度衛生行政報告例の概況 – 母体保護関係 と、 平成30年(2018)人口動態統計(確定数)の概況 – 母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数 から作成 中絶率 = 中絶数 / (出生数 + 中絶数)



24歳以下の中絶率の多さには驚きです。でも、注目してほしいのは、30~34歳の年代で底を打って、35歳以降は徐々に上がっていることです。45~49歳代なんて、実に半分近くの妊婦が中絶しているという結果です。

中絶の理由は人それぞれだとは思いますが、高齢での中絶の理由の一つに、「出生前診断で胎児に異常が見つかった」というものがあるようです。出生前診断とは、妊娠中に胎児の染色体異常などを検査できる任意の診断のことです。


まず、染色体異常をもつ子どもが生まれる確率は、妊娠年齢とともに加速度的に増加するという統計結果があります。染色体異常を持つ子が生まれる確率は、20代の妊娠では0.2%程度なのに対して、49歳ではなんと13%近くまで上がってしまいます。

「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」ワーキンググループ 報告書 – 女性の年齢と子供の染色体異常のリスク



そして、日本には「出生前診断」で陽性が出たから中絶する、という選択肢が実際に存在するのです。
こういうことは、むしろ義務教育で議論するべき内容なのでは?とすら思います。恥ずかしながら、私も、妻が妊娠してから初めて知ったことでした。妊婦健診のときに担当の先生から、出生前診断の案内を渡されて、色々と調べる中で初めて知ったことでした。


スポンサーリンク

ポーランドとの中絶事情の違い

ポーランドでも中絶はできるのですが、事情は大きく異なるようです。まずは法律の違いから見てみましょう。

法律の違い

日本の中絶に関する法律

日本では、中絶に関しては母体保護法で定められています。該当箇所を抜き出してみました。

第1章 第2条
2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。
第3章 母性保護 第14条
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる。

母体保護法

「胎児が、母体外において生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満とのことです。つまり、適応条件を満たすことで、妊娠21週6日目までは、中絶を行うことができるのです。
そしてこの法律のポイントは、経済的理由により、中絶を行うことができるという点です。出生前診断で陽性が出た場合、中絶の理由は「経済的理由」になります。


ポーランドの中絶に関する法律

ポーランドでは、”o planowaniu rodziny, ochronie płodu ludzkiego i warunkach dopuszczalności przerywania ciąży”(家族計画、人間の胎児の保護、妊娠中絶のための条件)という条項にまとめられています。


日本の法律との違いで気になった部分を抜粋してみます。

  • 日本では22週未満であれば中絶することができるのに対して、ポーランドでは12週までしか中絶できません。12週であれば、出生前診断の結果を見てから中絶することは、ほとんど不可能になります。ちなみに、12週の胎児は8cmくらいで、22週は約30cmです。30cmですよ!
  • 日本は経済的な理由で中絶を行うことができますが、ポーランドでは経済的なことは、正当な理由にはなりません
  • ポーランドでは、緊急の場合を除いて、中絶を診断する医師とは別の医師が手術を実施します。つまり、2人の医師の同意が必要になります。これも、中絶を難しくするポイントです。なぜかと言うと、医師もカトリックである確率が高くて、医師に宗教上の理由で断られることもあり得るからです。
  • 日本は母体保護法なのに対して、ポーランドは胎児の保護に関する法律です。カトリック的な宗教観からでしょうか、胎児の段階ですでに人であり、人権が与えられます。日本の法律では、~民法において、権利・義務の主体となることの出来る資格である権利能力は通常、出生によって全ての人が取得する~”wikipedia:胎児の人権“ とあり、そもそも人権の定義からして、大きく違うようです。



統計比較

シンプルに、中絶件数で比較してみましょう。


2018年の中絶件数
日本 161,741件
ポーランド 1,076件



これはものすごい差です。一応、逆(?)の立場の見方も示しておくと、ポーランド国内では人工中絶はかなり難しく、中絶したい人は国外で行うケースも多いそうです。そして、不法中絶も少なからず行われていて、実際は1万件程度という見方もあるようです。

でも、仮に1万件だったとして、人口(PL: 38M, JP: 127M)を考慮しても、5倍近い差があります。少子化がこれだけ社会問題になっているのに、この結果はどういうこと?!と思ってしまいました。


まとめ

  • 日本の中絶率は、30~34歳の年代で底を打って、35歳以降は徐々に上がっている。
  • 中絶に関する法律は、日本は母体保護法なのに対して、ポーランドは胎児の保護に関する法律
  • 日本では経済的な理由により、中絶することができるが、ポーランドではできない。
  • 日本は22週まで中絶ができるので、出生前診断の結果を見てから経済的な理由で中絶することができる。ポーランドの中絶は12週までなので、出生前診断の結果で判断することができない。
  • 日本人はポーランド人に比べて、少なく見積もっても5倍近く人工中絶している。



参考資料

この記事を書いている人 - WRITER -

Comment

  1. snow より:

    政権交代して中絶禁止になったみたいですね
    デモが行われてるようです

snow へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Copyright© 統計するポーランド , 2020 All Rights Reserved.